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今回は、2月初旬に開かれた輸入車組合主催の試乗会のなかからアウディA6をご紹介しよう。
毎年大磯プリンスホテルで行われるこの大イベントは、目の前に太平洋の大海原が広がり、そのロケーションとともに天候さえ良ければ最高に楽しいのである。幸い今年は快晴、しかも2月にしては異例の穏やかな日で、落ち着いてじっくりデザインチェックをすることが出来た。
有名雑誌社の大掛かりなロケで混雑する人気エリアを避け、一番海よりの明るい場所が我々オートモーティブデザインお気に入りの場所である。
他の取材班と距離が取れるため、あたりに気遣うことなくデザインにうるさいスタッフと、大声で「きつーい」意見交換ができ、私も勉強になる。

さっそくエクステリアデザインを見てみよう。
計算し吟味した単純で美しいカーブ、豊かな断面とのシンプルな構成によってダイナミックさを表現した大胆な造形だ。こうした力強さの表現方法は、抑揚のある面造形によるマッチョな官能的表現とは異なり、クールで知性的に感じる。
1986年頃、ガラスの段差が小さいフラッシュ・サーフェスボディーに進化したアウディ80が登場し、その知的な「ドイツ的記号性」ゆえに東急沿線の高級住宅街や神戸芦屋ではベンツ、BMWに次ぐ第3勢力に瞬く間にのし上がった。
じっくりと造形を観察した結果、A6は、こうしたインパクトの大きかった1987年の80とくらべ競合他車に対していまひとつブレークスルー出来ていないように感じる。
原因として考えられるのは、ターゲットカスタマーをBMWやメルセデスのカスタマーに近づけすぎたのではないだろうか。本来、アウディを評価するカスタマーは、もう少しモダーンで先進性に対して興味が強いタイプで、それ故1995年にTTというイメージリーダーカーを作り、アウディ・ブランドとしてのアイデンティティーの明確化を成功させたのではなかったのか?

もう少し具体的な造形の特徴で説明すると、キャビンのボディーに対する乗せ方である。TTはベルトラインから下で力強さのある塊としての造形を完結させ、キャビンは独立させていたのが新しかった。これまでのクルマの造形のしがらみをきっぱり断ち切っていた。ところがA6はCピラーの付け根のボディーへの流し方でニュアンスあるハイライトの美しさを競う昔どおりのサルーンの構成に戻ってしまっている。
これは、1986年型80からTTに集約進化させたボディーとキャビンの新しい関係の提案を後退させ、伝統を重んじるメルセデスと同じ造形の保守的な考え方に歩み寄ってしまっているのだ。だから、シンプルな構成が効果を発揮できず、かえって造形の情感不足=インパクト不足となってしまっている。
このあたりは、チーフデザイナーも気になるらしく、フロントグリルに幅を微妙に変化させたクロームメッキの装飾的な額縁を付け、なんとか造形の弱さを誤魔化そうとしている。しかしそれは、かえってこれまでのアウディ・デザインのポリシーと相反する「媚びた」姿勢を印象付ける結果となって、私は戸惑ってしまうのである。媚びるデザインというものは、ロールス・ロイスやメルセデスのように、100年がかりの証をお客の側から求められるから成り立つのであって、突然造り手が提案して、そう簡単に叶う問題ではない。ニッポンの自動車メーカーもこのあたりを無神経にないがしろにしすぎるが、こんどのA6のエクステリアデザインはこうしたドイツらしからぬ「軽さ」と、アウディらしからぬ保守的デザインが日本的で、とても気になってしまった。

 

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