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AUDI A6 3.2 FSI QUATTRO
インテリアデザインに移ろう。
室内を覗き込んだ第一印象は、「適切な高級感」といった印象である。
新しくも古くも無い、ちょうど真ん中狙いのテイストで、できるだけ好き嫌いのない個性を抑えたデザインだ。また、作りが丁寧で真面目で穏やかな雰囲気が特徴である。
シートはその目的どおりのデザインで、縫製もしっかりした良い作りである。しかし、ドライバー席に座り走ってみると、思ったほど良くないのである。
オペルを始め、ドイツ車はみんなシートに関しては一流である、といった先入観で評価してしまうからなのかもしれないが、フロントシートは座面が小さいため居心地が悪く、また浮かせたデザインの前端の左右が弱いためしっかり感も乏しい。原因には、本革の質の変更によるのではないかと思われるが、当初の試作で硬くなめした厚手の革を計画し、途中で深シボの柔らかく薄めの革に変更したりすると必ず起こることで、発泡ウレタンの高度から設計し直さなくてはならなくなるほど、本革シートは神経質なノウハウを必要とする。A6クワトロのシートは最新の柔らかい極上の深シボ革である。ちなみに、A8のシートをチェックしたが、こちらは普通の上質革で硬さもパーフェクトでトップクラスレベルであった。

次にインストルメント・パネルである。精緻な造りこみで質感は極めて高い。最近のメルセデス以上の出来である。しかし、なんとも複雑で煩いデザインなのが気になる。
うまく整理されていないのだ。ラウンドしたメーターフードも欲張りで、アルファロメオのように独立タイプにも見せたいのか、中途半端なふくらみが煩雑だ。空調噴出しグリルも、せっかく整然と並べても其々の目的の方角にルーバーを向けると、かえって不揃いが気になりうるさい。また細かいようだがメーター横の液晶ディスプレイの枠と空調グリル、センターコンソールの枠取りラインと無関係だったり、とにかく古臭いデザインで、我々デザイナーはこの10年来ここから如何に脱却し進化するかを切磋琢磨してきたのに、あっさりここのレベルに戻られては敵わない。右端のメーターフードの端末処理方法も、私が大昔の1982年ごろ新世代三菱キャンターの同じ場所で苦労した収束のさせ方と同じで、他のディティールとともに構成があまりにも古い。極めつけはパンダのたれ目のようなメーターで、このカタチにした必然性が機能面からはまったく伝わってこない。

ドアトリムは唯一問題が無いと思われたが、今度はどこかで見たようなデザインが気になりだした。センターコンソールに眼を転じれば、シフトレバー後ろにも、グローバル化の嵐の象徴であるジョグダイヤル風大型ノブが有るではないか!
ドイツ車第三の個性を誕生させ、発展させたアウディ・デザインが2003年のショーカーを皮切りに、2004年に自信を持って発表した車である。目標はすでに定まっているようだ。ニッポンより数年早く訪れたベビーブーマー世代の熟年化と懐の暖かさに合わせ、収益性を見越してターゲットカスタマーをリッチな高年齢層に変えてきているのだろうか。日本のメーカーより真剣に考えた結果のコンセプトか?デザインに対して素直に評価できなくなるような、様々な可能性について考えさせられるクルマである。

さて恒例の採点に移るとする。


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