automotive design    
Car Design New Car Info Drive Info 自動車保険 自動車買取
car design michelin MASERATI QUATTROPORTE

エキゾチック・カーとかスーパーカーといった懐かしい呼び名が当てはまるクルマは、バブル崩壊とともに、夜の銀座や六本木でもめったにお目にかかれなくなった。
日本経済も「上昇のきざし」程度の回復では、黒塗りのハマーや銀色のフェラーリ・モデナがたまに現れる程度である。
最近になって銀座ではようやく黒のロールスロイス・ファントムがでーんとパーキングメーター2個分を占領しているのを見るようになった。周りに遠慮なく威張れるお金持ちがようやく元気を取り戻したのかもしれない。
そうした状況のなか、イタリア唯一の最高級4ドアサルーン、マセラティ クワトロポルテは日本で発売され1年以上が経つのに、残念ながら街では一度もお目にかかっていないのである。
気になっていたのであるが、先日私にとって幻の、この新型クワトロポルテを試乗する機会に恵まれた。今回はその一部始終をご紹介しよう。
深みのあるワインレッドのボディー色は、透明度の高い綺麗なルビー色である。艶のある分厚いガラス質のクリアコートは誰もが気が付く「特別」である。カタログによると、正式名称は「ボルドー・ポンテヴェッキョ」とのことで、なぜかフランス特級ワインの産地名を使っているのが気になるが、とにかく、熟成した深みのある色合いで、写真ではお伝え出来ない第一級の手間をかけた最高級塗装であることは確かだ。

エクステリアデザインの第一印象を一言で言うと、「超現実イタリアンエキゾチック」である。
明らかに、1957年発表の3500GTと1963年発表の初代クワトロポルテのデザインの特徴を、現代のボディー設計基準の枠のなかで再デザインしている。したがって、タイムトンネルから50年ぶりで出てきたみたいに浮世離れしていて、観るものを感動させるのだ。
極めつけは1948年A6 1500ベルリネッタ スペチアーレのフェンダー部に開いた3つの空気抜きの穴まで再現するという念の入れようで、マセラティ・デザインの50年の歴史をこの一台に集約している。
こうした商品作りの発想は、音楽業界から始まったサンプリング&リミックスの曲作りと似ている。このことはちょうど10年前に私が21世紀初頭の社会現象として、クライアントの某自動車メーカーに予測した重要アイテムで、私はアレンジメント・デザインと呼んでいる。
結果として、デザインからは名門マセラティとしての誇りの高さは感じられるものの、残念ながら、どうしてもレトロ趣味の印象は拭い去れず、派手な特徴の寄せ集めに思え品格が感じられない。

さて肝心の造形を観てみよう。
先ほど述べたように、いくつかのカタチの特徴を盛り込みながらアレンジしている。
前後にほぼ一定に通した豊かなショルダーのふくらみは、あきらかに3500GTを造ったトゥリング的だが、ふくらみをかなり強調しあちこちアクセントを付けているため、まったく別な印象である。トゥリングのボディーのように優しくエレガントな色気ではなく、シルベスタ・スタローンみたいにマッチョなイメージである。
クルマのデザインで重要なのがウィンドウの表情である。特にフロントウィンドウはボンネット断面とルーフの断面、およびフェンダーからすでに始まっているAピラーとの綿密な相関関係でほぼ決まるのである。ところがボディーの面造形はしつこいくらいに細部に渡って手を入れているのに、大切なフロントウィンドウをはじめとしたすべてのウィンドウの表情、ライン取りがクワトロポルテはどうもしっくりこない。それぞれがてんでバラバラで勝手なことをしている感じなのである。
しっかり造形されたものはそれぞれの位置関係が完成されているので、わずかでもラインを変えようものならバランスが崩れてしまう。ところが、クワトロポルテのウィンドウの見切りラインは、まだまだ動かせる余地がある。
ちなみに初代クワトロポルテやジウジアーロがデザインした3代目は、このウィンドウの表情が極めて知的であり大人っぽさを表現している。また完璧な状態なので変えることは不可能であろう。

 

automotive design car design michelin top
1 / 3
NEXT