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リア部のデザインで気になるのが、フロントの気迫のこもったマセラティの主張が影も形も無くなって、突然ヒュンダイのフラグシップ・カーのXGや旧型クラウン的な、きらびやかなアジア系デザインになっていることである。前と後ろではまったく別なクルマの趣である。
フロントやサイドの雰囲気を決定付けているビンテージなデザイン処理すら、リアに回ると皆無で、現代の量産車に共通な面造形で締めくくっている。
このクワトロポルテに乗らなければならない経営者たちは、量産のGOサインを出す際に後部を確認するのを忘れたのだろうか。不可解である。
自然の景観の中で見ると、不思議なことに気が付いた。それは絶対的なサイズが発信する威圧感によって「でかい!」と感じるのだが、デジカメの液晶画面に収まってしまうと、迫力が失われてしまうのである。
これまでデザイン開発で何度か経験したことなのだが、小型車で成功した造形を大型にスケールアップすると、思わぬ壁に突き当たる。スケール感が狂った車になってしまうのである。つまり、FRP製の最終モデルが完成し、はじめて人が乗り込んだとき気づくことが多いのであるが、運転する人が不自然に小さく見えてしまうのである。
其の逆の場合も起こる。小型車の場合などは、大型車のテイストでかっこ良くデザインがまとまっても、ドライバーシートに座った人の顔がやたら大きく力士のように見えてしまうことがある。
そこで、カメラマン氏の発案でサイトの社長の新車同然のユーノス500とのツーショット写真が、クワトロポルテの非日常的迫力を伝える最適な方法ということになり、引っ張り出して並べてみた。
ツーショット写真で見てみると、その巨大さと迫力がきちんと表現され、かたやユーノス500の凝縮された造形が発信する時代を超えた存在感もあらためて確認できたのである。今回は、支えてくださる関係者のおかげで思わぬ体験をすることが出来た。
インテリアデザインは豪華である。最高級本革とローズウッドで隙間なく埋め尽くされている。シートは高級車にふさわしい伝統に従った縦に縫製ラインを通したデザインで、ヘッドレストには巨大なマセラティの紋章がそれぞれに付いている。
我々ニッポン人には派手すぎて成金ぽく感じられるかもしれないが、イタリアやモナコの王侯貴族レベルはこれくらいがふさわしいのであろう。
インパネは小細工のない堂々としたデザインで個性がある。しかし旧型の4代目のスエードを使ったハンドメイドでなければ作れないゴージャスな面影はなく、いかにも量産車といった造りに進化してしまった。
特に空調吹き出しグリルやスイッチベース、ナビシステムなどの樹脂部品、これまでのクワトロポルテのシンボルであったアナログ時計などが全て安っぽいデザインになってしまったのである。センターコンソールが分厚いローズウッドであっても、これでは台無しである。
リア席に座ってみると、巨大なクルマにしてはドアの足抜きが狭く、後頭部に圧迫感もある。エクステリアデザインの事情もあろうが、もう少しキャビンを広げても良かったように思える。
前席の裏には美しい仕上げのローズウッドテーブルが付いている。ところが残念なことに引き出してセットしても傾斜している為、まったく物が乗らない装飾品であった。ちょっとした工夫が欲しいところである。
まだまだ書きたいことがあるが、デザイン評価に移ろう。
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