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CHRYSLER 300C
 

エクステリアデザイン  

★4.5

大切なのは、どんなにユニークなアイデアでも、バランスが悪かったらアイデア倒れになる。クライスラー300Cの賞賛に値するのは、デザインレベルも最高ではないのだが、かなり良いところでバランスが取れていることである。伝統のモチーフのアレンジも、あまり力まずに余裕を持って、楽しみながら軽やかにこなしているのである。
前回のクワトロポルテは、ここのところが違っていて、気負いすぎの硬さが見る側にひしひしと感じられ、手を抜いたところと完璧なところのバランスの悪さを露呈してしまったのである。
300Cも似たようなミスマッチが有るため0.5減点した。それは、リアのコンビネーションランプである。これではフロントマスクの伝統のアレンジとは無関係で、最近のキャデラックではないかと見間違えそうである。
せっかくここまでアレンジしたのなら、リアランプも1955年ウィンザー4ドアセダンの個性的でシンプルなデザインをモチーフにしたほうが、全体の力強いモードにぴったりではないかという、私のカウンタープロポーザルを書き添えておこう。

インテリアデザイン
★3.5

3つのウィークポイントがあり、それぞれ0.5ポイントづつ減点した。
1つ目は、先ほど申し上げたカラーリングの問題である。NAVYの軍艦色は良くない。アカデミー賞の授賞式にも似合うようなコンセプトでも良いと思えるのだが…。
2つ目は、ドアトリムやセンターアームレストが商業車デザインというミスマッチである。デザインだけではなく、真空成形のバリが手に触れる構造であったりと、造り込みもここだけ商業車なのだ。不思議である。
3つ目はリア席に着座したとき問題になるのがルーフ・アシストグリップである。
ボディー断面が気持ちよくタンブル(樽のようにカーブすること)したエクステリアデザインのため、ドア側に普通に座ると、額のすぐ上に真四角で丈夫そうなアシストグリップが飛び出ているのである。その半端ではない安全配慮への無神経さは、20年前乗っていたトラックベースのシェビーバンとあまり変わっていないため、驚きの減点となった。
こうした事例に遭遇すると、国交省の認証検査で、輸入車の場合は安全の目視検査はノーチェックだというのは本当らしい。あるいは、シートベルト着用の義務を怠ったものは、頭にグリップが刺さっても自業自得ということなのかもしれない。
ちなみにオペル・ベクトラは、私が乗っていた初代のモデルですら完璧にルーフに引っ込む構造になっていた。
総合評価
★★★★☆クライスラー300Cは、私の欲しいクルマの仲間に加わった。別企画があるので、このサイトでこれまでに表明したクルマしか申し上げられないが、ルノー・アヴァンタイム、レンジ・ローバー、シトロエンC2 、ガンディーニのデザインした旧型マセラティ・クワトロポルテ、それと生活の実用車としてトヨタ・シエンタである。
自分でもバラバラで、脈絡が無いように思えたのであるが、実はどの車も出身国のクルマ文化を高いレベルで実現しているものばかりなのである。不思議なことにこれらのナンバーワンのクルマたちは、私には優劣付けがたいのだ。

今回の300Cは走りにも驚かされた。アメリカ車の既成概念は全く通用しない剛性の高い感覚で、これはもうメルセデスだと思えたのである。3.5リッターエンジンは、A/Tミッションが優れているためか、2トンの車両重量にもかかわらず、某国産セダンより加速が良い印象を持った。ステアリングの敏捷性は、最終型のRX-7に似たところがあり、時々轍の跡にハンドルを取られるが高い安定性を示し、このクルマはアメリカ新世代カーの第一号と位置づけられることを確信した。
またクライスラー300Cのデザインは、頼もしいことに安易にグローバル化に流れることなく、胸を張ってアメリカンの魅力を再構築したハイレベルなデザインを達成している。

ワクワクするクルマが消えつつある中、私にとってシェビーバンが最後の魅力あるアメリカ車であったが、本当に久しぶりに登場したエポックメイキングカーのために、今夜はとっておきのバーボンで乾杯するとしよう。

2005.5.25 (荒川 健)


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