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スバル R1
 

エクステリアデザイン  

★4.0

軽自動車をデザインする場合、衝突安全基準は同じなのに、小型車との必要以上な差別化としか思えない車幅の20センチもの差をどう処理するかである。
“軽”のデザインは、豊かな面造形を狙っても、車幅が極端に狭く見えない範囲で収めざるを得ないというのが、これまでの常識であった。しかしイタリアからやってきたデザイナーは、迷うことなくアルファロメオGTと同じ感覚でエキゾチックな抑揚のある面造形をほどこした。
結果、真後ろから見るとかつてのBMWメッサーシュミットを彷彿とさせるタンデム2人乗りみたいな幅狭感がある。しかしである。「幅が狭く見えてもかっこよければいいじゃないの?」ということを、言葉ではなく製品で世に問いかけたのがスバルR1 なのである。
そういえば、1950年代のフィアット500“トポリーノ”は、もう少し室内を広く取ることは可能であったが、それよりボディーのクオリティー感を犠牲にしないデザインにしたところが偉かった。R1のデザイナーは先人の教えを忠実に実践したのかもしれない。

フロント回りのデザインは、富士重工のブランド構築への想いがうまくコントロールできず、造り手側の理屈優先になってしまったようで、説明的なデザインなのが良くない。全体の完成度との落差を重く見て1点減点した。

インテリアデザイン
★4.0

シートの出来が良かったのと、2プラス2のコンセプトにした割りきりが好ましい。
0.5減点したのは、ステアリングホイールである。一見かっこよく、グリップ断面も問題無かったのであるが、親指がかかる部分が平面で幅広く、縦列駐車などでせわしくステアリングを回転させる場合に突き指しやすい。一流の老舗であるMOMOなどの製品は、スポーツタイプの場合は特に表面を削って傾斜させ、横バーとステアリングのリング部の接合部分も必ず65ミリ程度以下に抑えてある。

インテリアのカラーリングは、大人っぽいデザインを狙ったためと思われるが、特に樹脂部分の朱色はシボが安っぽいせいもあり年寄りくさい色調になってしまった。子供の頃お世話になった水枕の色を連想させる暑苦しい色相のため0.5減点した。
シトロエンC2や先回のクライスラー300で使っているような新しい樹脂の質感にチャレンジしても良かったように思える。
総合評価
★★★スタイリング優先のエクステリアデザインの場合、どうしても犠牲になるのが安全性に重大な影響を与える斜め後方の視界である。R1はアルファロメオGTと視界の弱点も似ていて、Cピラー周辺の死角が大きく、ヒップポイントが高いぶん斜め後方の状況が見えないのである。左合流時やバックの際はかなり注意を要する。少々なら良いが、これはちょっとやりすぎているため厳しい点数になった。
このレベルの視界性能では1990年代半ば頃までだったら、真面目なメーカーなら社内基準をクリアー出来ずデザイン変更を余儀なくされたであろう。
私は堅いことは言いたくないが、こと走行安全上重要な点には今後は厳しい見方をするつもりである。
今回はデザインは内外ともに ☆4.0の高得点であっただけに残念である。

automotive designの2004年度人気ランキングでも、並み居る世界の強豪を相手に3位に付けている。しかも軽自動車であるのがすばらしい。
レガシーもトップレベルのデザインであったし、このところデザイン部門の歯車がうまく回りだしているようである。
ところで、R2のフロントデザインとよく似て非なるものを、莫大な費用を投入してよく造ったものである。ヘッドランプさえ別物である。
私などは、始めからR1の顔周りで計画すればよかったのにと気楽に考えてしまうが、大英断を下した開発主査の意気込みとこだわりは相当なものだ。エクステリアデザインからはそれは充分に伝わってくる。歴史に伝説として名を残す名車になるに違いない。

2005.6.22 (荒川 健)


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