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car design michelin SUBARU R1

四季のなかで梅雨が最も“ニッポン的”な情緒を感じる季節である。今頃の時期は、太陽の角度のせいで紫外線が強く、そのため新緑の「みどり」はひときは明るく発色し美しい。
今回取り上げさせていただくスバル R1は、そんな季節にぴったりのタマゴ色をしていて新緑に映える色合いだ。デザインもクリームとバターがたっぷり入ったオムレツみたいな印象で、これまでのニッポン車のなかではとびきり個性的である。
それでは、その気合の入った造形振りをじっくり鑑賞するとしよう。

こうしたスポーティーなクルマのコンセプトで、絶対にはずせないのが躍動感の表現である。イタリア車の中でもアルファ ロメオは1950年代からこうした躍動感を込めたフォルム造りのマエストロとして、世界のトップの座に君臨してきた。
読者の皆様もメディア等でご存知のようにR2,R1を手がけたデザイナーは以前はアルファ社に在籍していたイタリア人だそうである。
さすがに、高めの重心を意識したライン取りのベクトルが前進モード全開で、きっちりと良い仕事をこなしている。彫刻的な立体感の出し方も手馴れた感じで、ニッポン車にありがちなもたついたところが無く、気持ちが良い。
特に、軽自動車の場合はホイールプリントを始めとして制約が多く、アイデアを駆使しないと貧相な箱車になってしまう。機能重視の商用車タイプでは、日本勢がホンダを筆頭に世界に誇れるGOOD DESIGNのクルマがひしめくが、今回のR1 は軽のエモーショナル・カー部門で、私個人の基準でM-BenzのSMARTを抜いてNo.1に躍り出たすぐれものである。

さて、いつものように細部を見ていこう。まず前席優先のパッケージングで、リアタイヤ付近のキャビン後端を絞り込むことで豊かなサイド面が実現している。
リアの居住性で細かいことを言わなければ、“軽”だってこんなにセクシーな造形が可能なのだ。

R1のデザインで最も成功しているのがホイールアーチ周辺の処理である。
タイヤを支えているフェンダーのボリューム感のある膨らみは見事な造形力で、しかもボディー側の付け根に相当する部分に設けられた幅7ミリほどのアクセントラインが効果的だ。メリハリを利かせるのと同時に、1ミリでも造形の豊かさに寸法を使いたいR1のデザインでは、この僅かな平面部でボディー側の面の張りがずいぶんプラスされている。
こうしたトリック的なテクニックも素晴らしいアイデアで、同業者としては勉強になる。

ぐるっと一周して、最もかっこよく見えるのは斜め後方からのビューだ。
使い勝手も大事だが、スバルR1のデザインコンセプトを全うするにはリアゲートのオープニングを下げるわけには行かない。設計サイドとの激しいやり取りが目に浮かぶようで、デザイナーとしては安定感を与えるため、バンパー部の量感が絶対必要なのである。
自動車デザインの進化の過程で、1980年代後半の、バンパーとボディー一体化の概念の登場はエポックメーキングで、それ以降のデザインの進化のスピードが加速した。マツダ時代にプレッソを開発しているとき、上司から度々「尻が少々重たくないかい?」と言われたが、ウエッジしたスタイルのリアに安定感を与えるため、担当デザイナーと最後まで守り通した記憶がある。
当時プレッソは世界に先駆けてボディー一体型バンパーの概念の先頭を切っていた。そうした流れを受け継ぎ、進化を遂げたR1のリアビューはとても美しい。

 

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