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スバル R1
 

エクステリアデザイン  

★4.0

最初に述べたように「垢抜けたデザイン」の一言に尽きる。
なぜ垢抜けているかというと、先の内容の繰り返しになるが、ダイナミックなフォルムの追求に的を絞った造形のクオリティーアップを全力で追及しているからである。最近の国産人気車のモデルチェンジに有りがちな、デザインテーマの希薄さをカバーしようとしたキャラクターラインやグラフィックでの誤魔化しがないからである。こうしたうわべのインパクト追求がアジアン・カーの非永続デザインの根源であることを他社は自戒すべきである。

満点から1点減点したのは、以下の理由だ。
まずは、ヘッドランプの形状である。リアコンビランプが新鮮で、今後の定番的な構成となるであろう優れたデザインであるのに対し、新鮮味が無い。GM的テイストに合わせたのかもしれないが、ハッキリ言ってGM本体のデザインは老化してしまっている。
ちなみにGMグループのオペル・ベクトラは、世界トップの優れたデザインレベルを達成しているが、なぜかヘッドランプが古臭い。これはあきらかにGM本社がグループ内で広がりすぎたデザインテーマを、とりあえずヘッドランプだけでも統一感を打ち出そうと働きかけたとしか思えない。
スズキが考えた斬新なデザインをGMに直談判してもよかったように思う。
もうひとつはリアバンパーである。かっちりしたボクシーなイメージは正解だが、あまりにもレーシングカー的というか生々しいそっけなさを感じる。もう少し曲面のハイライトに方向性のあるニュアンスをつけた方がさらにクオリティーがアップしたように思える。

インテリアデザイン
★2.0

欠点は無いのだが、特徴がなさ過ぎる点を天秤にかけると大きくマイナスに作用してしまう。せっかくのエクステリアデザインの頑張りにたいして、無印良品ではなく、感動できるソフトウエアーを提案して欲しかった。

また、先ほど述べたように商品力を訴求したいといった姿勢が乏しく、なんとなく一歩引いた感じがして寂しい。ひとつ気が付いたのが、ドアトリムのスイッチ類やその掘り込み穴、インナーハンドルとベゼルなどが軽自動車のように小さいのである。寒冷地で手袋をしたままではパワーウィンドウのスイッチに指がかかりそうもない。メーターフードも小さく、メーター視界も余裕がありすぎる。写真写りは有利かもしれないが、こうした縮小感が質素なイメージにつながっているのかもしれない。
リア席の天井に取り付けられたアシストグリップが、最近の車には珍しく掘り込み無しで取り付けられているのも感心しない。長身の場合、おでこに当たる危険性が高い場所である。以上の項目を減点した。
総合評価
★★★★スイフトの価値は、国産稀代の塊感のあるエクステリアデザインにある。洗練度といった面でもの足りなさもあるが、その価値の大きさを私は高く評価した。超控えめなインテリアデザインが低い得点でも、総合評価での影響は少ないのである。
  
開発の志の高い車である。走るとタイヤのせいもあり、走行音はさほど低いレベルではなかったが、エンジン音は静かで、特にアイドリング時の静けさは高級車並である。実用的ないわば日常生活での「下駄グルマ」であっても、静かなほうが良い。
こうしたクルマ造りをきちんと積み上げてゆくことが、ここ一番というときに名車を生み出すことに繋がるのである。
ところでスズキには、マツダが経営危機に陥ったとき、優秀なデザイナーが何人か移籍している。私がお世話になったマツダのデザイントップも、鈴木会長に請われて一時期デザインをコントロールされていた。そうした時期と重なるタイミングでスイフトは開発され、レベルの高いブレークスルーデザインが世に出たのである。
スズキ以外にもマツダからは何人ものスペシャリストが他の自動車会社に移籍した。幸いマツダは業績が回復したが、かつての抜きん出たデザイン力が回復したとは言えない状況にある。しかし大局的な見方をすれば日産自動車もそうであるが、景気の変動による企業の浮き沈みはデザイナーの流動化を引き起こし、ニッポン車デザインのレベルアップにつながった、という良い結果をもたらしたようにも思える。

2005.7.27 (荒川 健)


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