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メーカー通信簿Vol.12 シトロエン
筆者がかつて、欧州出張途上のパリでの日曜日の当てもない散歩で、路地裏の石畳にひっそりと横たわる旧い、しかし美しく保たれたDS21のおおらかなタタズマイを眼にして足が止まってしまい、日頃の短期決戦のようなデザイン作業が空しく感じられたものだった。その後、マセラティの協力の下に産み出された不運短命に終わったスポーツセダンのSM,リッターカークラスのGS,そしてDSの後継に当たるCXなど、機構のみならずシトロエンらしい先進的なルックスを纏っていたものだ。だが、トラクシオン・アヴァンの時代から保護を与えてきたミシュランも耐えきれず、終にはプジョーの傘下にはいることになり、70年の終盤からプジョーベースのコンパクトカーの投入から現代のシトロエンの幕が上がったと言える。
現代シトロエンの初期を彩るデザインの特徴はと言えば、自社デザイナーの払底によって外注したベルト−ネのクリスプなスタイルだろう。当時はマルチェロ・ガンディーニが携わったと聞くが、70年代初期のアウディ、そしてVWに対するジョルジェット・ジウジアーロのパサートやゴルフに見られるクリスプラインと共通するようで面白い。BXに始まりAX、XM、ZXなどが新たなシトロエンのスタイルとして登場したわけだが、従来のシトロエンスタイルとは全く違ったテイストは、ユーザーから受け入れられたもののユニークさという点では高い評価は与えられないだろう。
だがしかし、このベルト−ネとの関わりが大輪の花を咲かせる結果となったのである。エグザンティアだ。93年デビューのデザインは、自社デザイナーとベルト−ネとの共同制作と聞く。一見地味な5ドアセダンながら、目を凝らすとその絶妙にリズミカルなプロポーション、クリーンかつメリハリを効かせた面構成、そして精緻に磨き込まれた面質は、完璧とも言えるバランスの中で高質な存在感を見せているではないか。既に現役を離れた筆者ながら、“世の中にはホントに優れた才能がいるもんだ!”と、唖然としたものであった。

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